ギギン!
右から打ち出された突き、左から振り下ろされた斬撃を一挙にさばき、振り払う。
刃を返して大剣を振りぬくが、からぶり。相手は一足飛びで間合いの外。
俺にできたおおきな隙を狙って相手が双剣を掴みなおして踏み込んでくる。速い! 一歩目で俺の間合いへ入ってきやがる。
しかし俺は攻撃すらできない、振りぬいた大剣を構え直せてもいないからだ!
二歩目は左側へと回り込むような跳躍。
俺は左足を引いて薙ぎ払いの動作に入る、が、その前に敵が地を蹴りすべるように肉薄!
ひゅん!
一撃目の右剣をなんとかかわす、しかし本命は二撃目の左!
やらせるかよ!
振るった大剣が相手を薙ぎ払う。金属音と手応えから防御を感知、即座に腕を止めて切り返しを狙う。
敵を視認。
敵はすでに数メートルも向こうで着地していた。
あいつワザと吹っ飛ばされやがった! 咄嗟にかかげた左剣を伸ばして自分から距離をとったんだ、チクショウめ!
「遅れるなよ、テメエ」
疾走を開始した敵はすぐに俺の間合いへ!
斜めに振った大剣を右剣で押さえ、跳びあがる敵! 神速の左突きを身を反らして回避。
視界のはしで相手が右剣を逆手に持ち直す。
大剣を引き寄せて右剣の薙ぎを弾くが、左剣が逆側から振り下ろされる!
右肩に爆発的な熱。
血飛沫が見える。
相手が頭上へと舞い上がる。チャンスだ。
傷も痛みも無視して大剣の刃を右手で叩く。
「ウェあッ!」
ガギギン!
必死の奇襲も双剣に防がれるが、まだだ!
空中の敵を射抜くように大剣を突き出す。ギッ、と軋むような音を出して敵が突きを捌く。
引きざまに斬撃、左剣が受け止める。衝撃を受け流すように敵は宙を舞う。
滞空している敵へと連撃を繰り出す!
ギギギギギギギギギギギャアン!
ズキリと痛んだ右肩のせいで止まった連撃の隙に敵がふわりと背後へ着地。
振り返りざまの俺の攻撃! 敵は姿勢を直す間もなく迎撃!
俺の大剣と敵の双剣が激突して絶叫をあげる。俺と敵も吼える。
敵が大剣を蹴っ飛ばし、双剣で一気に押し切ってくる。弾かれるままに上段に構える俺の至近距離で敵が双剣を鞘に収める。
「二刀流居合」
!?
「『地獄斬り』ッ!」
すぱん、と。
ある意味あっけなく双剣が駆け抜けた。
敵の握る双剣がゆっくりと刃を返し、俺はそれを見ているしかできず、
「吹き飛べ、『斜陽砲』」
怒涛の挟撃に吹っ飛ばされた。声も出ねェ。
空中で×の字に胸が裂ける。血が迸る。なんてこった。これが二刀流居合。
ふつう二刀流で居合い抜きなんてできない。どうしても踏み込み足が邪魔になって刀を振るえないからだ。
けど、こいつの居合は違う。踏み込みの必要のない、いうなれば零距離居合。だから二刀流でも神速の居合を放てる。信じられんねぇ。
「ぐああああああああああああああああっっっっっ!」
地面に激突、そのままゴロゴロゴロゴロと転がってしまう。途中で大剣を離してしまったのも無理はない、だろ?
激痛に意識が明滅。
目を開けても世界は真っ暗だ。ぐえ。地面に顔こすりつけてる場合じゃない。
いてえ。やばい。
軽快な足音で相手が疾駆している。とどめをさす気だ。
剣だ。剣を掴まないと。死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ!
大地を蹴って敵が跳躍するのが見えた。大剣はすぐそこに転がっている。
「磔刑で死ね!」
風を切って敵が落ちてくるのがわかる。突き刺そうとしている。させるか……ッ!
「うォらア!」
全身の痛みを無視して、力を振り絞って大剣を掴み寄せる!
……だめだ、届かない。
どすどすッ!
俺の首と心臓が一瞬前まであった場所を双剣が貫いていた。あぶねえ! 死ぬかと思った!
届かねえならと伸ばした手で地面を叩いて離脱したのだ。
「ボロボロの体で何を足掻く」
抜いた双剣を鞘に収めて敵が薄く笑う。俺は大剣を掴んで立ち上がっている。
俺の間合いの内だ。
届く。
けど動けねえ。もうほとんど力が残ってない。
賭けだな。
「二刀流居合……」
ざっざっと無造作に敵が歩いてくる。右手が左腰の剣を、左手が右腰の剣をそれぞれ掴む。
俺はゆっくりと大剣をわきに流す。刃は下、右手は峰に添えて、左手で掴む。
勝負は一瞬、ってやつだな。
敵の冷たい瞳を俺は睨みつづけている。勝負は一瞬、だ。
ざっざっざっ
ドクン、ドクン、ドクン
勝負は、
「『地獄斬り』!」
「うォるあァッ!」
一瞬!
交錯――
耳の痛くなるような静寂。
その静寂を破って刃が土に突き刺さる。
「がはッ……! テメエ」
敵が血を吐いて倒れ伏す。その手に握る双剣は、両方とも折れていた。決死の力で振るわれた大剣に砕き折られたのだ。
「負けた、ぜ……」
ばかやろーが。
「俺も限界だよ……」
そして俺も倒れた。
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