30cm
私の従兄弟と、久しぶりに会った。
正月の実家で、彼はコタツに座っていた。
隣に30cmの隙間を空けて。
なんだろうあれ。
私が入るにはちょっと狭い。なんでそんなにみっしりせにゃならんのだ。
もっと真ん中に座ればいいのに。
訊いてみた。
「なんでココ空けてんの?」
従兄弟は振り返ってふにゃっとした笑顔を見せた。
幸せそうな笑顔。
「ここはね、小人さんの席なんだよ」
はい?
小人さんて、…って言ったのかコイツ?
「小人さんは見えないけど、ここに座るんだ。お気に入りなんだよ。特等席だね。いつもさ」
無邪気な笑顔がなぜかわかんないけど無性に癇に障った。
むかつく。
「いないよ。そんなやつ」
私の口からするりと悪意が滑り出ていた。
笑顔が凍りつく。いい気味だ。
私の心の黒い部分があざとく哂った。
理性はやめろやめろと絶叫している。ホントの私はおびえて震えている。
それでも止まらない。舌が痙攣するように酷い言葉を紡ぐ。
「バカじゃないの。なにが小人よ。いる訳ないじゃない」
やめて。もうやめて。
傷つけたくない。そんな顔が見たかったわけじゃない。そんな、ざっくり傷ついた顔。
舌が固結びにされて動かない。
嘘にも冗談にならない。
謝ることすらできない。
ぽろりとそいつの手からみかんが零れ落ちる。
――だめだ。
夢中で足を動かしてその場から離れた。
逃げた。
正月が空けて実家から帰る日。
私はあれから顔を見ていなかった従兄弟を見つけた。
同じ部屋同じコタツ同じ背中、――同じ空隙。
かわいい花が置いてある。
「か、かわいい花ね。小人さんへのプレゼント?」
あの時と同じように近づきながら声をかけた。
従兄弟はゆらりと振り返って、虚ろな瞳に私を映した。
「死んだよ」
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