[PR]100万当る!ウエディング:ブライダルのLOVE資金に♪今なら無料
邪神
シディアン地方の北のほうに行くと昼でも暗い魔物の森がありました。
冬のある日。近辺の村人に恐れられているその森へと、白い鎧をまとった王子様が踏み入っていきました。
正義の心を持った王子様は村人の不安と恐怖を払うため、森の奥に住むという邪神を倒しに行ったのです。
夜よりなお見通しの悪い森の中では人を喰うといわれる熊や狼が襲いかかってきましたが、王子様の握る聖なる剣は牙も爪もはじき返し、野獣を血肉に変えました。
雪のちらつくなか、王子様がたどりついたのは城とも塔とも判断のつかぬ、不気味にそびえた建造物でした。
回廊を歩く王子様の現れたのは、異形どもでした。
体は人間なのに首から上が無数のヒル。
切断された両腕とぐるぐる巻きにされた、六本肢の聖書。
乳房以外の皮膚がすべて裏返った女性。
無限連鎖する絵巻物。
踊りをやめない首なしの道化師。
背中合わせにくっついた醜悪な2人の男。下半身は馬の脚。
王子様は勇猛果敢に魔物を斬り払い、階段を上り、迷路を抜けました。
梁からいくつもの死体がぶら下がる広間で王子様を迎えたのはまさしく邪神でした。
みっつの目と二枚の舌を持ち、トカゲのようなサカナのような顔をしています。
その巨躯は異様な圧力を醸し出し、ねじくれた腕は大木のようです。
3本にわかれた尻尾がゆらゆらと揺れています。
王子様は言いました。
お前は善良なる村人を恐れさせる邪神である!
私がお前を倒し、村人たちを安心させてやるのだ!
邪神は叫びました。
我を否定するものはすべて滅びよ!
光の何を畏れよう、我は悪ではない!
両者はお互いに雄叫びと咆哮をあげ、激突しました。
邪神は毒の霧と炎を吐き出し、王子様は風を切るマントでひらりと舞い、破邪の剣で斬りかかります。
くびられ吊られた死骸たちが謳うなか、王子様が邪神の腹を切り裂きました。
邪神は汚液を撒き散らしながら倒れました。
王子様は剣を血振るいして鞘に収めました。
うめき声がしました。
帰ろうとしていた王子様は振り返って驚きました。
そこに邪神の姿はなく、真っ黒なドレスを着たお姫様が倒れていたのです。
王子様は事態を把握できませんでしたがとにかく駆け寄り、彼女を助け起こそうとしました。
お姫様は低く呟きました。
我を邪神とそしりながら、手を伸ばすのか。
王子様の動きが止まりました。
お姫様のドレスは腹部で一文字に切れていました。お姫様の体もでした。
邪神はちからなく笑いました。
そしてまっすぐに王子様を見つめました。
我らはその心のままに姿を変えたのだ。
我は王家の娘であったが、内なる欲望を抑えられはせなんだ。
どう在っても他者に受け入れられぬとしても、どうして己を殺す必要があろうか。
己がままにいたいと思うのが悪なのか。
異質であるのは罪なのか。
お姫様は一筋涙を流しました。
そして目を伏せて、床に身を預け、ゆっくりと言葉をつむぎました。
我はただ、……我らしく在りたかっただけなのだ……
そしてそれから動くことはありませんでした。
お姫様が二度と動くことはありませんでした。
ぎいぎいと死骸が梁を軋ませるだけで、ほかは静かな夜でした。
王子様は生還し、多くの村人からとてもとても感謝されました。
めでたしめでたし
戻る
トップ