スマシス!! 水銀燈1000人斬り


翼をはためかせて一気に踊り場まで登りきる水銀燈。
ブーツのかかとが接地する寸前に、凶悪な風が彼女に迫る!
耳障りな金属音。
咄嗟に掲げた剣にぶつかっているのは金色の鋏。大きさこそ半分程度なものの、その破壊力は決して劣ってはいない。
「そ、蒼星石!?」
驚く水銀燈の台詞どおり、その鋏を握っているのは第四ドール、蒼星石だ。
しかし、雛苺と同じくその身の丈は半分しかない。
「なんだって、いうのよッ!」
力づくで剣を振るって吹っ飛ばすと、やはり雛苺と同じように蒼星石も霧散して消えた。
「訳がわかんなぁい……」
そう呟きながら再び翼を使って階段を登り、3階へと到達する。

闇から飛び出すのは金、そして気迫!
ギイン!
弾き飛ばされる33体目の人形に代わって34体目と35体目が挟撃を仕掛けてくるっ!
右の35体目が貫かれ、左の34体目が引き戻された柄で撃沈する。
即座に足を振り上げて、立ち上がった33体目を壁に蹴り当てて霧散させる。
金属が擦れる音が聞こえて、振り仰ぐと無表情な蒼星石が天井を蹴っていた。
防ぐこともかなわずにその場から飛びのいて金色の凶器を避ける。
あっけなく床が砕け、破片が飛び散る。
その36体目を跳び越えて37体目が鋏をかまえて現れ、さらに階下から雛苺があふれ出てきた。
心胆を寒からしめる光景に水銀燈の顔がゆがむ。

身をかがめて37体目の横薙ぎをかわし、そのまま跳びこむように雛苺の群れへと跳躍する。
無邪気な顔で雛苺たちが哂う。
哂う哂う哂う。
「ッメイメイ!」
熱波爆撃爆風!
生じた熱に、圧力に、暴風に人形がめきゃめきゃと壊れていく。
38、39、40、41、42、43、44、45、46、47。
残骸に降り立ち、左手に持ち替えた剣を背後へ一閃、跳びかかってきていた36体目を二つに断ち割る。
さらに右手へと剣を戻し、突き出して37体目を宙へと縫いとめるっ!
「鬱陶しいから……、消えなさぁい!」
もがく蒼星石が爆散、煙となって宙に融けていく。

続けて上から跳びかかってくる48体目、49体目を上がりざまに打ち払い、50体目を叩き落して霧散させた。
もう一度3階の床を踏んだと同時に、のけぞる水銀燈。
一瞬前まで彼女の上半身が占めていた空間を金色の軌跡を描いて庭師の鋏が通り過ぎる!
51体目の人形・蒼星石を下から切り裂き、さらにその後ろに立っていた52体目の顔面を貫く。
吐き気がするような凄惨な光景も、瞬時にして霧となり消えていく。
水銀燈はリノリウムの床を蹴って一直線に廊下を駆け抜けていく。
四階への階段は緊急隔壁が降りているために廊下をまわらなければ登れないのだ。

下段からの斬撃!
半身になって鋏を避け、提げていた右手の剣を振り上げる。鈍い音ともに空中からの不意打ちを狙った54体目の体躯が断ち割られる。
腹部ががら空きの53体目に蹴りを叩き込み、人工精霊が迫撃をかける。
「メイメイ!」
轟音とともに53体目が爆散し、闇に潜んでいた55体目と56体目が融解する。
57体目と58体目、それから59体目が四肢を千切られて霧散。60体目がガラスをぶち破って落ちていく。
4枚目の扉を越えたところで数体の蒼星石(縮小サイズ)が現れる。
「そろそろ彼女、死んじゃうんじゃないかな?」
不吉なことを嘯きながら61体目が鋏を開く。
62体目が疾風のごとく身を沈めて駆けてくるのを右足で迎撃、横に避けようとしたその蒼星石を方向転換させた右足で壁へとぶち当てて粉砕する。
63体目の鋏を叩いて64体目と同士討ちさせ、絡まった2人の蒼星石を一度に切り飛ばす。
首をずらして61体目の攻撃を回避、髪を一房切られながらも61体目の半身を断絶させる。さらに水銀燈の左腕が伸ばされて蒼星石の下半身をつかむ。
それをそのまま前方へ投擲!
人形同士がぶつかる軽い音がして、61体目が霧散。
倒れた65体目を踏み潰して、現れた66体目を殴り飛ばす。
金属音。
飛来した庭師の鋏を弾き飛ばし、振り下ろされた二連撃を食い止め、さらに鋏を一つ折った剣。
その剣がひるがえり、67体目、68体目、69体目が爆散。
鋏を投げて失った70体目を無造作に蹴って吹っ飛ばし、ドレスを舞わせて反転、左腕を突き出す。

「メイメイ!」

口を開け、きゃらきゃらと哂う雛苺の群れが迫っていた。
「滅びなさぁい!」
十数体ものハーフ雛苺が爆砕されていくっ!
燃え尽きる雛苺を掻い潜って苺蔓が噴出する。肉薄する脆弱な植物を切り捨てるが、どっと量を増した蔓が右腕を封じる。
首だけで後ろを振り返ると、機に乗じた幾体かの蒼星石が鋏を開いて飛び掛ってきている。
舌打ち。

続けて左手を封じようとする苺蔓を手首の動きだけで剣を動かして切断。
紫の光が走る。
上下左右から振りかぶられた庭師の鋏を、一歩前進してすべてかわし、前へと飛んだ人工精霊に命じる。
「メイメイ!」
苺蔓を爆風で引きちぎり、燃やし尽くす爆撃。
その奥に隠れていた十もの雛苺をも融解させるその威力! 断末魔が爆風に乗ってブチ切れていく。
自由になったその身を回転させて遠心力もそのままに99体目、100体目の蒼星石を爆散させる。101体目の鳩尾につま先を叩き込み、102体目を巻き込んで天井に埋め込む。
その頃ようやく背後の雛苺群が霧散して消滅した。

どん。
衝撃。
膝が折れて床に着く。
肩が熱い。
「君にはめぐを助けられないといってるじゃないか」
背後から冷徹な声。
力の入らない右手から剣が落ちる。リノリウムの床にやわらかく突き刺さり、重力にしたがって転がる。
左手で右肩を押さえる。
目を見開いて振り返ると、蒼星石が立っていた。
残酷に。
十体以上もの。
「な、なによぉ……」
すぐさま膝を立てて立ち上がろうとする。

「動かないほうが身のためだ、水銀燈」
首元に冷えた圧力を感じる。
すべての動作を停止。首を動かさずに目だけを前に戻すと、
「壊れてしまうからね」
冷たい金属の切っ先。
たどっていくと、笑いもしない蒼星石が鋏を握っている。

「誰に向かってそんな事いってるのぉ? 壊す? 誰が、誰をぉ?」
薄く笑って全力で右手を動かす。
痙攣しながらも首元の鋏を弾き、同時に潰れるようにして地面に倒れる。
「僕が、君をだよ水銀燈!」
弾かれた鋏を強制的に慣性から奪還、逆手に持ち替えて地面へ振り落とす!
鈍い音がして鋏が突き刺さる。

廊下の床に。

「なに!」
蠢く蒼星石がざわつく。
水銀燈の首元に鋏を突き付けていた蒼星石の背後。
妖艶に、儚くたたずむのは第一ドール。
いつの間にかその左手には剣が握られている。
「ううううううごああああああああああっ!」
耳障りな絶叫が響く。
水銀燈の目の前の103体目が爆散、絶叫も途切れる。
「ほぉんとつまんなぁい。あんなので水銀燈を仕留めたつもりぃ?」
呆然と立ちすくむ蒼星石たちに人工精霊が飛び込む。
紫の光が目も眩むような閃光を発する!
「ジャンクにしてあげる!」
爆心地が灰燼と帰す。砕け散り、融解していく104、105、106、107、108、109、110体目。
爆風によって後ろへと飛ばされ、床や壁にぶち当たったり中庭へと放り出された人形が5体。
116、117、118体目は逆に吹き飛ばされて水銀燈へと近づきばっさりと切り捨てられた。

「……やっぱり、めぐに何かがあったとしか思えないわ」
呟きつつ人工精霊の力によって右肩を治癒する。
ものの数秒で右腕は再び自由となった。
きびすを返して駆け出す。角を曲がりざまに剣を薙いで、119体目の胴体を砕き切る。
しゃがんで避けた120体目を蹴っ飛ばし、低空薙ぎを披露する121体目を戻しざまのかかとで踏み潰す。
飛びかかって来た122体目を左手で殴り飛ばして肘で123体目、裏拳で124体目を砕く。
伸ばした手刀で125体目を叩き落して、126体目を巻き込ませて霧散させる。
床を蹴った127体目、128体目を貫き、天井を蹴った129体目を切り上げる。

粉々になった蒼星石が床に落ちては消えていく。 階段とは反対側の廊下は短い。
すぐに角へと到達する。角へと滑り込みざまに剣を突き出す。
ギンギャン! ガチン!
先行した剣に幾多の鋏が噛みつく。
剣を引き戻すと手を離し遅れた蒼星石三体が釣れた。
目を見開く130体目、131体目、132体目が壁に叩きつけられて圧壊。
半分サイズの鋏を剥ぎ取り、壁に隠れて投擲。

苦鳴を合図に突撃を再開し、肩に鋏の突き立った133体目を蹴り飛ばす。
顔面が砕かれていた134体目と、鋏によって壁に縫いとめられている135体目は無視して、壁を蹴って突貫してくる136体目を左拳が迎え撃つ。
逆側の、窓ガラスを軽く蹴って向かってくる137体目も左の裏拳で撃退し、喚声を上げて天井から襲いかかってくる138体目を貫き砕く。
足元に群がろうとする4体の蒼星石を左足で払って、倒れたところを右足で踏み潰していく。
気分はよくないが、どうにもリアリティーがない。

階段へと続く廊下を駆け抜けようとすると、前方の床が爆砕されて苺蔓が現れる。
「くッ」
廊下を這い回る蔦が水銀燈へと迫る!
爆砕地点へと近づきながら伸び来る蔓を切り払っていく。
絡まり蠢き伸びゆく苺蔓が進路を塞いでいた。
「これ以上水銀燈をいらつかせないでぇっ!」

残り858体。


次へ進む
前へ戻る



戻る
トップ