スマシス!! 水銀燈1000人斬り
同期しているかのように完全に同じ速度で水銀燈に近づく薔薇水晶たち。
間合いに入る直前で水銀燈が無造作に踏み込み、764体目を真っ二つに斬り捨てる!
返す刀で近傍の4体を破壊し、さらに前へと足を踏み出す。
769体目の胸を突き崩し、剣を水平にスライドさせて770体目の左腕を切り落とす。770体目の首に刃をめり込ませながら身を開く。
背後で大上段に構えた771体目の手首を右手で掴み、砕く。
よろめく771体目の向こうから数多の薔薇水晶が吶喊してくる。
雨を讃えるかのように水銀燈がワルツを踊る。
772体目が上下に二分割され773体目が首を落とされ774体目の顔面が破砕され775体目は脇腹から股間までを切り裂かれて転がり、776体目と777体目が引きずり倒され778体目は首を折られて779体目にぶつけられ780体目とまとめて蹴り飛ばされるっ。
一瞬の遅滞もなく突き出される薔薇水晶の剣をねじって弾いて抑えて受け流す。
下段からの斬撃を剣を踏みつけて停止させ、上段からの唐竹割を剣で防ぎ、肩から781体目にぶつかる。
781体目を地面に叩きつけてぶち壊すと同時に黒竜を発動、凶悪なあぎとが荒れ狂う!
黒竜が羽へと散華していく。
ざっと髪をなでる水銀燈は病棟の5階を見上げた。
「めぐ……」
その台詞が雨にかき消されると同時に――
――地面に散らばる薔薇水晶のかけらすべてが紫色に発光!
水銀燈が気づくのを待たずして全てのかけらから水晶柱が爆発的に生成されるっ!
急激に成長する数百数千の鋭い結晶体が中庭の地面も病棟の壁も窓ガラスも穴だらけにして滅ぼしていく!
雨に濡れて輝く紫水晶の地獄。
その中心で水銀燈は磔刑に処されていた。
それでも剣と翼で可能な限り破壊して刺突を防いだのだろう、彼女の周辺には粉々になった水晶が散らばっている。
「う……あ……」
力の抜けた手から剣が滑り落ち、かんかァんと水晶を叩きながら落ちていく。雨の雫をその刀身に滑らせながら剣が空中に還元。
「どうやら君はここまでのようだね、水銀燈」
「やっぱり貴女にめぐを救うことはできないのね」
「君はアリスどころかローゼンメイデンにすら足りない」
「ジャンクなのよ水銀燈」
林立する水晶柱に降り立った蒼星石と雛苺が口々にそういう。
うつむく水銀燈の口元がゆがむ。
「……くく」
漏れ聞こえるのは笑声。
大量の蒼星石と雛苺が一斉に口を閉ざす。
「あははは……可笑しぃい」
顔を上げて全身を貫く紫水晶を一瞥する水銀燈。蒼星石らは気持ちの悪いほど同時に鋏を掴んだ。
「何が可笑しい……」
「何が? 決まってるじゃなぁい――」
ズッと両翼が膨張、それぞれ二股に裂けて黒竜へと変化する!
中庭を3階の高さまで埋め尽くす水晶を怒涛の勢いで破滅させていくッ!
黒と紫の狂乱の中心で水銀燈は高らかに笑った。
「あなたたちの間抜けさによぉ! あッはははは」
雨の雫と水晶の欠片が重力に支配されて落ちていく中を水銀燈がそれらと逆向きに飛翔する。
糸で吊られたマリオネットのように中空にとどまった大量の人形が同時に見上げる。
大群が動くよりも早く水銀燈が右腕を突き出す。
ボロボロのドレスの裾がゆれた。
「――メイメイ」
無造作に呟くと同時に人工精霊が右掌から射出され、人形たちの中心へとたどり着く。
人形のガラスの眼球がぎょろりと動き、その光を映す――
音をも消し去る爆滅がすべてを無に帰す!
燃えながら爆風に飛ばされてくる腕を叩き落として水銀燈は視線を下から横へと動かした。
そこは病棟の最上階、めぐの病室。
黒翼をはためかせて廊下へと降り立つ。
扉のプレートには「柿崎」の文字。水銀燈はぽたぽたと雫を落としながら扉に手をかける。
ぱぢっ
はじける様な音とともにもとより心許なかった廊下の明かりがダウンした。
「―――ッ」
刹那、水銀燈が飛びのく、同瞬リノリウムに深々と突き刺さるなにか。
「闇討ちしようっていうのぉ……」
床に突き立ったなにかが引き抜かれる音。水銀燈はそれを聞きながら空中から剣を掴み出した。
――風切音!
水銀燈がかざした剣に激突するのはアメジストの剣! 火花に照らされるのは目玉の抜け落ちた薔薇水晶!
切り返した剣と剣が再び交錯、噛み合って悲鳴を上げる!
995体目の姿が唐突に闇へと溶ける。姿勢を崩すまいと硬直する水銀燈の頭上で剣閃が光る!
両翼が羽ばたき急襲を回避、水銀燈が垂直に剣を突き出すも996体目の隣に再出現した995体目の剣がそれを塞ぐ!
闇へと消え去る2体の薔薇水晶。
暗闇に目が慣れ始めた水銀燈の視界一面をコンクリートの血の如き紫色の光が覆う!
床と壁と天井が形質変化させられて水晶柱を生成するっ!
とっさに飛びのきながら剣を振って刺突を回避する水銀燈――の背後に影のように995体目が出現!
さらに一歩横っ飛びに縦の斬撃を回避するが背にした壁から紫光がほとばしる!
転がるように再度バックステップを踏む水銀燈に995体目の薙ぎが迫る!
同時に出没していた背後の996体目の襟首を掴んで叩きつけるように前へと押し出す――破砕音!
首を刎ねられた996体目を串刺しにして向こうの995体目へと突きを繰り出すが首を失った996体目の全身が発光したため剣を放って後ろへと緊急離脱する!
水晶柱を形成する前にぼろぼろに崩れていく996体目。
は、と息を吐く水銀燈の背中は廊下の終端である壁に接している。その壁から人形の腕が二対四本飛び出して水銀燈の四肢を壁へと縛りつける!
光源が失われて再び廊下は闇に覆われる。
たん、という軽い踏み込みの音――闇の中で水銀燈は口の端を吊り上げて鋭く叫んだ。
「メイメイ!」
指向性を持った灼熱の爆風が995体目を消し炭に変えるどころか影すら残さず滅ぼす!
同時に膨れ上がった両翼が竜の頭へと変化し壁を破壊する!
瞬時に転移した997体目と998体目が完全左右対称に剣を提げて肉薄――それぞれの剣尖が壁を削る!
帳を下ろすかのように闇が侵食――壁を削る音が左右同時に消え失せる――咄嗟に防御した水銀燈の剣を一撃にしか思えない二撃が打ち据える!
左の剣が目にも留まらぬ速さで水銀燈の剣を連打する!
わずかなズレで右の剣も水銀燈の剣を叩き続ける!
隙の無い連撃に水銀燈が歯軋りする。
火花が照らす997体目と998体目の間に雫が垂れるように999体目が着地、逆手に掴んだ剣で水銀燈の剣を下から弾き飛ばす!
水銀燈の剣が天井に突き刺さる前に997体目と998体目の8連突きが放たれる!
足を滑らせたかのようにしゃがみこむ水銀燈の真上で剣が還元していく。
立ち上がろうとした999体目と一瞬目が合う――床を蹴った水銀燈が猛烈な勢いで999体目へとタックル、体勢を崩された999体目とともに床を転がる!
闇の中で999体目の剣が床を滑っていく音が響く。
999体目の胸元を掴んで水銀燈がそれを床に叩きつける!
痛みなどこの世のどこにも存在しないかのような反応で999体目の両手が水銀燈の首へと伸びる。
塗り潰された視界を捨てて水銀燈は気配だけで攻撃を感知、横へと転がり逃げる。
転がりざまに999体目の左腕を掴んでもぎ取る!
立ち上がった水銀燈へと998体目の急襲!
上体を逸らし、さらに窓の桟へと飛び乗って二撃目を回避、999体目の左腕を投げつける。
反応した998体目へと桟を蹴って踵落としを見舞う!
998体目の頭が破砕される――997体目が天井へと逆さまに出現、斬撃を繰り出す!
998体目の身体を蹴倒して水銀燈が離脱するも999体目が腕を伸ばしてくる。
水銀燈が999体目の右腕を取って引き倒す――倒れる999体目の背中に997体目が姿を現し、薙ぎ払う!
999体目の頭を踏み潰して飛び退る水銀燈を追って997体目が転移する!
残り2体。
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