砂礫を蹴立てて巨躯が疾駆していく!
その巨躯の真っ向から硬チタン製の銃弾が無数に飛来、音速の壁を貫いて牙を剥く!
見渡す限り荒れ果てた大地のみがただただ漠と広がるなかを、人型に近いそれがその装甲で弾丸を弾き飛ばすっ。
横列に戦線をかまえた十数の敵機へと吶喊し、巨大な両腕を振るってそれらを打ち砕いていく。
巨躯の正体は空色の塗装が施された自律有機機械兵器。
その機体は、【RG-032K】というそっけない名前で呼ばれている。
どんッ
【RG-032K】の右腕が敵国の自律有機機械兵器の胸部を貫く!
自律有機機械兵器はその原理上、胸部に思考基盤と動力核を設けられているので、そこを破壊されると即死する。
右腕を引き抜きざま、ぎゅるっと振り返って背後から突進してきていた敵機へと左腕を叩き込む!
ふっとんだ敵機はそのまま他の自律有機機械兵器へと突っ込み、同時に大破する。
乾いた地面を踏みしめて【RG-032K】が残る敵機を掃討しにかかる。
だが、片手で数えるほどしか残っていなかった敵機はいっせいに撤退を始めたのだ。
【RG-032K】は攻撃を中止した。追撃もしない。
【RG-032K】の三次元レーダーに映っているのは、上空から急襲を仕掛ける【CONDOR】。
人と猛禽のシルエットに機銃を取り付けたような歪な有翼自立有機機械兵器である。
十を越す敵機がいっせいに銃弾をばら撒く!
腕の一薙ぎで硬チタンの軍勢をはらった【RG-032K】の頭上から先鋒が肢を振り落とす――【RG-032K】の右腕装甲がそれをふせぐっ!
さきほど撤退した戦線から放たれる大量の銃弾。
先鋒をつかんで銃撃への盾とした【RG-032K】。敵機の損傷は軽微。
さらに飛来する【CONDOR】二機――がほぼ同時に爆破!
煙を上げるのは【RG-032K】の右腕に仕込まれた機銃砲。たかだかと掲げた右手から硝煙がたなびく。
ぱっと放された先鋒が反撃に転じようとするのを無視して【RG-032K】の右腕がその胸部へと突きこまれる!
爆砕する敵機。
噴き出した煙が【RG-032K】を覆う。
黒煙へとつっこむのを躊躇したうち、二機の【CONDOR】がおもむろに伸びてきたマニピュレーターにつかまれる。
ねっとろりと粘く煙へと容赦なく浴びせられる銃弾がなににも当たらずに煙を貫通――つかんだ【CONDOR】を引き落としながら【RG-032K】が上空へと舞い上がる。
機敏に【RG-032K】へと向けた機銃から放たれた硬チタン製の銃弾もその両腕装甲にあまねく弾かれ、重力のままに落ちていく。
ごしゃっ!
脆い装甲が壊れる音。一機の【CONDOR】に着地した【RG-032K】の肢がめりこんでいる。
ふらつく【CONDOR】の上に立ったまま、【RG-32K】が両腕を広げる。
爆音が轟く。
機銃砲に撃墜された二機の【CONDOR】が煙を上げて墜落していく。
唯一無事な一機は甲殻を震わすと、方向転換をして逃げようとした。つかまれた。マニピュレーターの先には、空色の――
狂ったように機銃から弾丸をブチ撒ける【CONDOR】を両腕でつかんで機銃の照準を変える。
【RG-032K】の足元にじゃらじゃらと空薬莢が落ちては転がり、また落ちて累々。
【CONDOR】を捕獲したまま荒野へと着地した【RG-032K】の先には怯えたような敵国の戦線。
味方である【CONDOR】の機銃掃射にあえなく爆砕していく敵機たち。
『警告:危険』
【RG-032K】のアラート処理と同瞬、つかまれていた【CONDOR】が炎を上げて爆発する!
とっさに飛び退って衝撃を逃がした【RG-032K】へと、再びアラート処理が、三度、いや連続して絶叫する!
両腕を眼前で並べて防御姿勢をとった【RG−032K】へといくつも襲いかかるのは白射光。
白射光とは、高高密度の熱線――つまりレーザーである。
耐熱にも優れる【RG-032K】の両腕装甲が即座にレーザーの熱を熱拡散によって放射し、損傷を減らす。
レーザーの猛攻が止む。
戦線からのっそりと姿を現したのは、異形の自立有機機械兵器。
少なくとも人型には見えない。そのシルエットはどちらかというとクモに近い。
目立つのは頭部を囲う檻のような四本の角――否、砲塔だ。そこから白射光が放たれるのか。
その砲口に光が充填され始める。
【RG-032K】が問答無用で機銃砲を放つ!
しかし爆破されたのはクモではなく、量産型敵機である。とっさに切り札であるクモをかばったのだ。
乾いた地面を踏み砕いて【RG-032K】が走る!
突っ込んでくる量産型敵機を薙ぎ払い、亜光速で迫る白射光を腕装甲でふせぎ、【RG-032K】とクモの距離が縮まる。
進路をふさいだ敵機の胸部を撃ち抜いてクモの放った白射光が【RG-032K】の肩に穴を開ける!
【RG-032K】を虫食いにしようとさらに放たれた白射光を両腕装甲で損害減少しながらなんとか前進する。
ばらばらと飛来する硬チタン製の銃弾が【RG-032K】にダメージを蓄積させていく。
強制停止まで、余裕はない。
再び充填を始めたクモへと【RG-032K】が肉薄!
間に入った敵機の胸部を右腕でブチ抜いて爆砕させるっ!
連射される白射光を左腕装甲だけでふせぎながら、そのまま突進――押しつぶすようにのしかかる!
圧壊した砲口からエネルギーがあふれ出し、暴走して爆発する!
あまりの破壊力に【RG-032K】の左腕装甲は損害減少の許容量の限界を迎え、融解していく。
半壊になりながらも白射光を放ち続けるクモ。
そのクモへと、左腕装甲ごしに【RG-032K】は右手を向ける。
白射光を撃ち尽くし、充填を始めようとするクモにむかって【RG-032K】の機銃砲が火を噴いた!
片腕を失いながらも、立っている【RG-032K】。
そのダメージは大きいが、【RG-032K】は倒れなかったのだ。
多くの自律有機機械兵器の残骸が散らばる荒野で、【RG-032K】は唯一、倒れなかったのだ。

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