大乱闘 スマッシュ シスターズ !!
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「READY」
桜田家ジュンの部屋。
パソコンのディスプレイから水銀燈が出現、居合わせた真紅・翠星石・雛苺が迎え撃つ。
「GO!」
「乳酸菌とってるぅ?」
アピールとともに、翼をはばたかせて水銀燈が刃と化した羽根を飛ばす。
咄嗟に真紅たちはガード、なんとか驟雨をしのぐ。
真っ先に反撃に転じたのは翠星石。防御壁として使った世界樹の枝を水銀燈へと突進させる!
「食らいやがれですぅ!」
猛烈な速度で水銀燈へと肉薄する世界樹を、彼女は身を翻して回避。そのまま低空飛行に転じて雛苺へと接近する。
「うゆー、負けないのよー」
真正面から苺蔓で迎え撃つ雛苺。投網のような蔓に突っ込む直前、その手中に出現させた剣で水銀燈が苺を切り裂く! 苺蔓は軽々と切り開かれ、
「メイメイ!」
怒号とともに閃光が炸裂、爆音とともに雛苺が吹き飛ばされる。超至近距離による人工精霊攻撃を食らったが、雛苺が何とか吹っ飛ばずにすんだのはその足にくくりつけられた苺蔓のおかげだった。
機転と応用で辛くも戦線離脱を逃れた雛苺に変わるようにして真紅が飛び出す。
空中で体勢を立て直した水銀燈が一瞬後に叫ぶ。
「メイメイ!」
そして真紅も右手を前に突き出して叫ぶ。
「ホーリエ!」
二つの人工精霊が衝突、先ほどとは比べ物にならない轟音が窓ガラスを震わせるっ!
爆風が真紅と水銀燈の間合いを広げる。床に叩きつけられる真紅、天井へと逆さ向きに着地する水銀燈。水銀燈の顔には笑み。握りなおした剣がぎらりと光る。
「させないですよっ!」
真紅と水銀燈の間に突如世界樹が生える。如雨露を握った翠星石の援護。剣を振るって水銀燈はやすやすと障害物を切り分けるが、その間に真紅も立ち直っていた。
世界樹が夢の世界へと還元すると同時に真紅が花弁を撒き散らす。
視界いっぱいに拡散する薔薇の花びらを、即座に水銀燈が風を起こして吹き飛ばす。だが、それは詐術。真紅の罠。
「人はそれを……」
呪文のように紡がれる台詞。真紅は床を蹴って水銀燈の背後へとまわっていた。
「絆とも呼ぶのよ!」
振り返った水銀燈の右頬に真紅の握った拳が激突! 直撃を食らった水銀燈は殴られた衝撃のまま床に墜落。無様に落下する。
ダメージが100%に近づいた水銀燈は危機感を覚える。
「伸びやかにー健やかにー!」
翠星石の声とともに床から生えた世界樹が水銀燈に覆いかぶさっていく。
二重三重と重なり水銀燈を閉じ込めた世界樹の檻。それを見て翠星石が高笑いする。
「どーです! 翠星石に、参ったと言うがいいですぅ」
「だめよ翠星石! 水銀燈の力は――」
床に降り立った真紅の警告の途中で、
メリ…
不気味で危険な音が部屋に響く。
「ま、まさか……」
驚愕の表情で翠星石が一歩下がると同時に、まるで内側で爆発が起こったかのように世界樹の檻が炸裂粉砕! 千切れてばらばらになって夢へと還元する。
「こんなものでこの水銀燈を倒したつもりなのぉ?」
妖艶に哂う水銀燈の両翼が、それぞれ黒龍の頭へと変化していた。ぐるるるる、と龍がうなり火を吐く。
唐突に右の龍が伸び上がり、上から顎を開いて翠星石に咬みつく!
「きゃあっ!」
驚きと恐怖で防御もできなかった翠星石が扉へと叩きつけられる。続けて攻撃しようとする龍の動きが硬直する。
「うゆ…。いじめるの、めっ、なのよ」
苺蔓に絡めとられて龍はそれ以上翠星石に近づくことができない。身動きできない黒龍に向かって真紅が腕を突き出す。
「ホーリエ!」
飛来する人工精霊をにらんで水銀燈が奥歯をぎりと噛み締める。黒龍が翼へと戻って爆散! 水銀燈はもんどりうって倒れる。
「手応えが、ない?」
怪訝そうに真紅が呟く。その手元に舞い戻ったホーリエが明滅する。
「なんですって? あたってない?」
「うふふ、そうよぉ。おばかさんな真紅の攻撃なんて、この水銀燈には効かないのぉ」
龍を翼に戻すことによってダメージを限りなく0に減らす、水銀燈の防御術だ。三対一という戦状において、戦闘特化の水銀燈もダメージが蓄積せざるを得ない。
総ダメージ量が100%を超えると格段に吹き飛びやすくなる。
水銀燈も力の出し惜しみをしていられないのである。
「さぁ、みんなみんな……ジャンクにしてあげるぅっ!」
三人に降り注ぐ黒き羽の刃。雛苺は巨大化させた人形で身を守り、真紅はバラの花弁で相殺する。だが、未だ立ち上がれない翠星石は。
「きゃああああああああ!」
悲鳴を背景音楽にしてざくざくと羽が翠星石に突き立っていく。一本一本の与えるダメージは少なかれど、何十という連撃は牽制の域を越えている。
先ほどの龍攻撃でのダメージもあって、ついに翠星石の累積ダメージが100を越える。ダメージ表示が赤く染まる。
「翠星石! 水銀燈、やめるのだわ!」
もう翠星石は動けない。軽い一撃で吹き飛ばされてしまうだろう。
真紅が絶叫するように水銀燈を制止する。しかし、水銀燈の笑みは深く、暗い。
「何いってるのぉ真紅ぅ。アリスゲームは私たちローゼンメイデンの宿命。それに、戦うことこそ生きることなんじゃなかったのぉ?」
チャキ、と不吉な音を鳴らせて水銀燈が剣を構える。眇めた目で真紅を見ながら笑う。
「これがアリスゲームよ、真紅ぅ。貴女はそこで震えてみていればいいのよぉ」
「水銀燈!」
左の龍も翼に戻してはばたき、動けない翠星石へと近寄って、
斬!
――翠星石は吹っ飛ばされた――
「うにゅ……、すいせいせきがふっ飛ばされちゃったのー」
「雛苺。泣いても、……翠星石は帰ってこないのだわ」
真紅の指からはらはらと薔薇の花弁がこぼれる。まるで、涙のように。
その表情は陰に隠れてうかがい知ることはできない。だがその肩が震えている。拳は握られている。
「どうしたのぉ真紅ぅ。貴女が戦わないから翠星石はふっ飛ばれちゃっただけでしょお?」
剣を還元して宙空に掻き消し、水銀燈が肩をすくめる。裂けるように開いた口は、残虐な笑み。その瞳は獰悪な感情に濁っている。
「……水銀燈」
震える声で真紅がこぼす。
「覚えておきなさい。私は、誇り高きローゼンメイデンの第五ドール、真紅」
低く抑えられた声の迫力に、水銀燈も茶々を入れることができない。
「私は仲間をふっ飛ばした者をけして許しはしないことを!」
宣言と同時に顔を上げ、前へ向けた掌から花弁を撒き散らす!
「何いってるの真紅ぅ? 貴女ってほんとくだらなぁい」
飛び上がって花弁を避け、翼をはためかせる反動で大量の翼刃を飛ばす水銀燈。炸裂音とともに花弁と羽根が相殺されていく。
だが事態は膠着しない。真紅が床を踏みしめて前へ跳躍、真上へと右手を突き出し、叫ぶ。
「ホーリエっ!」
「ッ!」
爆音と爆風と爆砕! 逆巻く灼風が水銀燈を強引にふっ飛ばそうとする。
「真紅ぅッ! 蒼星石のローザミスティカを得ている水銀燈に……、人工精霊の攻撃なんて効くわけ無いでしょおォッ!」
牙を剥いて絶叫する水銀燈の両翼が龍と化す。吼え猛る二頭の龍がその首を伸ばして床に食らいつく。
「真紅みたいなジャンクがァ……、最もアリスに近い水銀燈に勝てるなんて――」
ごああああっ、右肩の龍が首を振るって雛苺に襲いかかる。巻きつく苺蔓を千切り、脆弱な人形の壁を粉砕し、その牙が雛苺に突き立つ!
「雛苺っ! 雛苺を離しなさい水銀燈!」
「――ほぉんと、つまんなぁい!」
雛苺に向かって走り出す真紅の台詞に聞く耳を持たずに水銀燈は絶叫する。双頭の龍が咆哮を残して両翼へと戻り、累積ダメージ量が一気に150を超えた雛苺へと黒き羽根を飛ばす!
「ともえ〜っ!」
――雛苺は吹っ飛ばされた――
黒翼をひろげて水銀燈が滞空。くすくすと嘲笑う。蓄積されたダメージは200に届くかといった満身創痍の状態で、水銀燈は嘲笑っていた。
「そこまでして貴女はいったい何をしたいの、水銀燈!」
悲鳴のように問いかける真紅に、水銀燈は笑みを含んだ答えを返す。
「アリスゲームの勝者になるために決まってるじゃなぁい。真紅ぅ、貴女ってほんと、おばかさぁんなのね」
自明のことを聞かれたとでもいうように、水銀燈は答えた。その声は壊滅的に暗く、破滅的に翳っている。底のない海のように光が届かない。
目的と方法が乖離しているのだ。あるいは、目的と方法が同化してしまっているのか。
どのみち水銀燈は壊れている。
その水銀燈を救えるのは真紅ではない。ローゼンですらないだろう。
「さあぁ、真紅ぅ! 今ここで決定的にジャンクにしてあげるわぁっ!」
空中で水平回転、勢いのままに大量の翼刃を撃ち出す水銀燈。その一枚一枚が猛火に包まれている! 真紅は横っ飛びに第一波を回避、さらに横転してダメージを免れていく!
回りこむようにして水銀燈の下へ近づいていく真紅に向かって水銀燈が急降下。目を見開く真紅の眼前が紫電に包まれる。
「メイメイッ!」
叩きつけるように炸裂する水銀燈の人工精霊攻撃! ボンネットが弾け飛び、鈍い音を響かせて転がっていく真紅の髪がほどける。乱れた髪の隙間から真紅の瞳がのぞく。
その瞳からは、――深い哀しみがあふれていた。
「やめましょう水銀燈! こんなことはっ!」
煤で汚れた真紅の悲愴な叫びも無視して水銀燈が剣を握る。
ばさりと翼をはためかせて水銀燈が強襲! 薙がれた剣を身を低くして避けた真紅を挟み込むように二頭の龍が牙を剥く!
「くうッ――!」
すれ違う龍のそれぞれの牙には真紅のドレスの切れ端。真紅は前へと跳躍して龍を回避、低空の水銀燈へと組み付いていた。
「あッはははははは! いいわねぇ真紅! いくわよぉッ――」
床へと押し倒された水銀燈は狂笑する。その右手には暗く光る人工精霊。
掴みかかっている真紅の右手も赤く発光している。
「――壊れなさぁい!」
「終わらせるわ!」
互いの右手が組みあい、人工精霊が衝突!
耳を聾する轟音が響き渡り、窓ガラスが破砕される。衝撃波で二人の右腕を覆うドレスが破け千切れる。
「真紅ぅ! まだ! まだよぉ」
再度水銀燈の右手が発光、紫電をまとって真紅に叩きつけられる!
同時に真紅の右手が赤く光って水銀燈に炸裂する!
爆音に次ぐ爆音。
双方の累積ダメージはとっくに200を超えている。
「ゴアアアアアアアアッ!」
水銀燈の左肩から生えた龍の首が真紅に襲いかかる。「ッ!」即座に飛びのき、掌から薔薇を散らす。右肩から伸びた龍が薔薇の障壁に激突!
双龍が爆散して翼に戻り、そのまま花弁を突き破って真紅へとふりそそぐっ。
「っきゃああああああ!」
ドガガガガガガガガガガガガガガガッ!
衝撃のままに壁へと激突する真紅、しかし翼刃は止まらず真紅の靴は床を踏むことすらできない。
「うふふッ、いいザマよぉ真紅ぅ。そのままふっ飛んでしまいなさぁい!」
宙から吊り下げられたように滞空する水銀燈。捻じ曲がった首、引き攣った頬、開いた瞳孔。
突き立ち、突き立ち、突き立ってくる翼刃にうずもれながら、真紅が唇を噛む。
「ホーリエッ!」
横に突き出された真紅の右手が炸裂、その反動で窮地を脱出。ボロボロになったドレスが痛ましい。累積ダメージは250を超えた。それでも真紅は毅然と立つ。
「止まらないというのなら……、止めるしかないわね。水銀燈、ふっ飛ぶのだわ!」
きっぱりと言い切る真紅の台詞に、水銀燈の笑いが止まる。
「……なぁに、言ってる、のぉ? 真紅、貴女が、水銀燈を? なんなの、それ。ほんとつまんなぁい。つまんなぁい!」
ドッ! 視界を埋め尽くす黒の刃が真紅を襲う!
連発する炸裂音! 花弁と羽根が物凄い勢いで相殺されていく!
薔薇の花弁と黒い羽根がぶつかり弾け舞い落ちてゆく中を、真紅がゆっくりと進む。その表情は決意にあふれ、その歩みに迷いはない。
「なによぉ、……なんとか言いなさいよぉ! 真紅ぅっ!」
翼刃を止め、水銀燈は両腕を真紅に向ける。目も眩むような紫色の光がほとばしり、紫電とともに水銀燈の人工精霊が飛翔するッ!
「ふっ飛ばしなさい、メイメイ!」
「……ホーリエ」
赤色と紫色が正面衝突、交じり合うように一瞬後、――床をも震わせて大爆発っ!
衝撃波が椅子を壁へと叩きつける! 粉々になって粉砕される椅子。その破片を、真紅の繊手が払う。
「ああああああああああっ! しぃんくぅ!」
塵煙を突き破って剣を構えた水銀燈が滑空して真紅へと肉薄! だが。
清冽な音が響く。
床に転がる水銀燈の剣。真紅の手に握られたステッキが、振るわれた剣を弾いたのである。そのステッキを放り捨て、真紅は振り返る。
力無く倒れ伏す水銀燈。翼はまるで枯れた植物である。それでも水銀燈は体中を震わせながらも立ち上がる。
「う、ふふ、ふふふ。し、んくぅ? 水銀、燈は、ジャンクなんかじゃ、ない、のよぉ?」
一歩、また一歩と、よろけながらも真紅に近づいていく。
「水銀燈……。もう、こんなことは終わりにしましょう」
「真、紅。終わりに、しま、しょぉ?」
真紅の握る拳が震えている。指は真っ白だ。唇は強く噛まれすぎて今にも破れそうである。しかし真紅は足を踏み出す。アリスゲームに決着をつけるために。
足に力が入らなくなって倒れる水銀燈。咄嗟にそれを抱きとめた真紅は顔を伏せる。
「真紅、もし……、私がアリスに、なれ、なかったら、お父様は、水銀燈を、愛、して、くださら、ない、の?」
「そんなこと無いのだわ……。お父様の愛は、ローゼンメイデン全員に、平等に向けられているのだわ」
「ジャンクの、水銀、燈、も……?」
「いいえ。いいえ! 水銀燈、貴女はジャンクなんかじゃない。貴女も立派な、ローゼンメイデンのドールズなのだわ……!」
激しく首を振る真紅の顔に髪がかかる。表情が見えない。真紅にすがりつくように立っている水銀燈が、真紅の顔を見上げて言う。
「泣い、てるの? 真紅……。なぜ、泣くの? 真紅」
「泣いてなんかいないのだわ、水銀燈。私は誇り高きローゼンメイデンの第五ドール、真紅よ。その私が、泣くわけないでしょう」
真紅の累積ダメージ量は300、水銀燈の累積ダメージ量は420。どちらももう軽い一撃でふっ飛んでしまう。
「終わりにしましょう、水銀燈。こんな争いにも、アリスゲームにも」
左腕で水銀燈を抱きとめたまま、真紅が右腕を振りかぶる。
「それを誰かは……――」
覚悟と決意と誓約を乗せて、真紅の拳が風を切る!
「――絆とも呼ぶのよ!」
――水銀燈は吹っ飛ばされた――
静かに真紅がアピール。
「次回もよろしくんくん、なのだわ」
「WINNER IS SHINKU!!」
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